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アレルヤとハレルヤ(+スメラギ)

スメラギさんの登場は間接的です。

僕が見つけた / ある幸せのかたち






目覚めると、朝。窓からは朝の光が差し込み…なんてことは無い。ここはトレミーの中の自室。つまり宇宙。体内時計を壊さないように地上に準拠したライフサ イクルを取っているが、視覚的には常に夜である。地上より太陽に近い場所にいるのに昼夜が無いんだから、やはり地球は神秘的なところだと思う。まぁ今はそんな事はどうでもいいと思う。とりあえず、だ。
「っつぅ…。」
いくら出迎えの朝日が無かろうと、一日で一番長い睡眠を取った後に訪れる目覚めは爽やかなものであってほしい。そうでなくてはならない。しかし。
「頭痛い…。っぅ、気持ちわる…。」
最高に体調不良なのは何でだろうか。

「そりゃ、お前があの女の深酒に付き合ってたからだろ。酒で記憶トンだか?」

ハレルヤが揶揄する。わかってるよ、忘れてないさ。確かにちょっと飲みすぎたかも。

「飲みすぎたんじゃなくて飲まされたんだろ。断りきれずに二日酔い、ってバカかお前は」

そう、確かに君の言う通り僕は馬鹿なんだろう。ついこの間酒の味を覚えたばかりの若造が、百戦錬磨の女性のお相伴に与っているのだから。ちなみに出場選酒 はいつでもウィスキー一択、しかもスメラギさんのペースに合わせてる上に酌(という名の強要)を断らなかったのでこのザマだ。我ながら無茶をしていると思 う。その代償として神様は朝を迎える度、愚かな僕に罰を与えているのだが。さて、いつまでもベッドに転がっていても事態は好転しないわけだし、とりあえず 水でも飲もうかな。

「…おい、アレルヤ。」

何だいハレルヤ。言葉を返しながら、自室のドアへ向かう。僕の部屋には水分の類を常備していない。水が欲しければ食堂に行かなければ。

「お前、あの女の酒に付き合うのやめろ。何回潰されたと思ってんだ。」

ドアに掛けた手を下ろし、視線を落とす。
…いつか言われるとは思っていた。実際、傍目に僕がスメラギさんと飲んで得るものなど何も無いように見えるのだろう。あと、ハレルヤは僕の体の事も気遣ってくれているかもしれない。事実、僕もちょっと肝臓に不安を感じる。

「はぐらかすな、アレルヤ。あの女の現実逃避にお前まで付き合う事無いだろうが。お前にとって飲酒は逃避先にはならないだろ。」

逃げる逃げないの話で言えば、全くもって正論だ、ハレルヤ。でも、僕は逃げたくて飲んでるわけじゃないんだよ。

「…じゃあ何だよ。代償の二日酔いなんて屁でも無ぇような、大層ご立派な理由があるんだろうなぁ?」

ハレルヤはちょっと苛立っている。僕の苦しみを背負ってきた彼だから、僕があえて苦痛を伴う所業を繰り返す事に納得いかないのかもしれない。…何て感懐は置いといて。

「あのね、ハレルヤ。僕と飲んでる時のスメラギさん、すごく楽しそうなんだよ。笑ってくれるんだ、僕に。僕にだよ?。こんな稀代の殺人者に。人でなし に。…普段もスメラギさんは僕に優しいけれど、でもお酒に付き合ってる時の嬉しそうな彼女と居られることは…僕にとって、得難い時間だと思うんだ。何てい うか…必要とされている感じがするって言うか…。だから、僕は断らない。むしろ、彼女に申し訳ないよ。僕なんかの自己満足につき合わせて。」

今まで口に出さずにハレルヤと会話していたのに、思わず声が出てしまった。ベラベラと喋っている間、彼にしては珍しく口を挟まずに最後まで聞いてくれた。

………そして、心底忌々しげに舌打ちをして、彼はそっぽを向いて黙ってしまった。

こうなってしまうとしばらくは話しかけても反応は望めまい。でも、僕は知っている。ハレルヤは過剰な現実主義者だから、僕の言に何か矛盾や甘い所があれば容赦なく切り捨てる。しかし、さっきの僕の発言に対する返事が舌打ちだけならば、きっと。

「ごめんね、ハレルヤ。いつか、他人に頼らなくても自分を保っていられるようになりたい。」
言ってしまってから、ふと考える。この”他人”とはどこまでが”他”なのか。
「ハレルヤ、君だけは、ずっと側にいてくれるよね…?」

語りかけてみて、気づく。僕はついさっきハレルヤを怒らせてそっぽを向かせてしまったじゃないか。

もうダメだ、仕方が無い。とりあえず水を飲みに行こう。

「またスメラギさんに謝られそうだな…」

ぼやきながら、僕はドアに手を掛けた。
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