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アレルヤとハレルヤ

※子供時代の捏造です※

生死の境界と矛盾の発露。





人を殺してパンを奪った。

人間の生命活動を停止させる行為に及んだのは

―――つまり、あの不幸な人間の喉仏を握りつぶしたのは

ハレルヤだ。

―――俺だ。

ハレルヤひどいよ、僕はあのまま飢えて死にたかった。地獄に出口なんか無いって地上に来て改めてわかったから。そらに居た頃から何となく理解してはいたけど。死んで天国になんて行けるとは思わないけど、せめて虚無の世界ぐらいには行けると思わないかな?

―――何をバカな事を。本当に死にたかったのなら俺を抑えきれたはずだ。全く、お前ときたら口ばっかりで、意志薄弱にも程がある。宇宙船での事もそうだ。結局、お前は生きたいんだ。他のあらゆるもの全てを犠牲にしてでも。今のお前のの中で、パン一つと人間一人の命は等価なんだよ。認めちまえ。そうすれば、

やめてくれハレルヤ、違う、僕は…周りをどうにかしてまで生きたいなんて、そんな

―――認めろよ。そうすれば、これ以上傷つかずにすむだろうが。生きるんだよ、お前は。関係ないたくさんの人間を犠牲にして、その命を足蹴にして生きていくんだ。そうでもしなけりゃ、何のために俺は同胞とやらを皆殺しにしたんだ。アレルヤ、死が簡単なものだなんて見当違いな考えは捨てるんだな。お前は俺が死なせない。生き地獄をゆくんだ、一緒にな。

それ以上、僕はハレルヤの言葉に何も返すことはできず、ただひたすらに涙をこぼすだけだった。

――――――――――――――――――

あの死体詰めの地獄から這い出て地上に放り出された僕たちが最初に直面したのは笑えるほどに単純な、しかし満たされねば死に直結する、そう、空腹で。

僕はこのまま飢え死んでもいいと思った。研究所という地獄から出てこれたと思ったら生命活動もろくに保証されない死の箱に詰められて宇宙を漂流して死にかけ、そして今、栄養が足らずに死にかけ。この世界はきっとどこまでも行っても地獄で、神が讃えられている麗しの国は無いのだ。そう思ったら、生きている意味なんて無いんじゃないかと思って。

そんな僕にハレルヤは言う。奪えと。道行く人から殺して奪えと。相手にしてみれば狂犬に襲われたようなものだと。僕は必死に耳を塞ごうとしたけど、その塞ぐ耳の間から理性が零れ落ちていくような感覚に陥って、お腹がすいた、死にたくない、何か食べたい、死にたくない、死にたくない………!!

そして今。ハレルヤと少々の言い争いをして、ぼろぼろ泣いて、僕はパンを食べている。銃を持っているのに何で彼はわざわざ縊り殺したのか?簡単だ。食べ物に血飛沫がついては、食べられなくなるではないか。死にたいと願って、彼から逃げ回った挙句彼に食料を調達させて、それを貪っている僕は、一体何なのか。ただの愚か者か。殺人者?狂人?もうわけがわからない。けれど、パンを食べる動作は止まらない。

―――そんなにあれこれ考えんな。これから先ずっとこんな風に生きていくことになるんだからよ。

ハレルヤが面倒くさそうに言う。…わかっているさ、まっとうに生きられるなんていくら夢見がちな僕でも考えてはいない。ただ、そう、これがまっとうな生き方ではないと感じられるだけの心だけは保っていきたいだけだ。僕は…人間でありたいから。

―――化け物が何言ってんだか。ま、俺としては逃げようが何だろうがとりあえず前向きに生きてくださるんなら何でもいいがな。

さっきまで死にたがってたのにいつのまにやら考えが反転してしまった。そうだ、生きていかなければ。血で血を洗う苦しみの連鎖からは最早逃れられないのだろうけれど。苦しいと感じていられるうちはまだマシなんだろう。まだだ、まだ、これからだ。

僕は、どこまで、歩いてゆけるのだろうか。ねぇ、ハレルヤ、君はどう思う…?
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